大学では版画を学んでいらっしゃったそうですが、ベルベットの布を脱色したり刺しゅうを施したりして絵を描く現在の作風になったのはいつごろですか? またそのきっかけを教えてください。
版 画技法のシルクスクリーンは版をキッチンハイターに浸けて図柄を消し、また新しい型を写すのですが、誤ってそのとき履いていたベルベットのズボンの上 にハイターを落としてしまいました。熱くて少し火傷をしてしまったのですが、その時ズボンの色が落ちたのを見て面白いなと思ったことがきっかけです。
また、版画は機材がないと出来ない技法が少なくなく、大学を出てからはアトリエもないので、それでも制作できる素材を使って作品を作っています。でも最近は油彩もまた描いてみたいなと思っています。
版画や版という考え方は今の作品にどう活かされていると思いますか?
版画を制作していたことで線に気を使うようになったと思います。
昨年、アフリカでレジデンスされたそうですが、印象に残るエピソードがあれば教えてください。
ナ イロビでの滞在中に、スラムの青年達と数日ワークショップをした時のことですが、彼らは朝ご飯も食べず毎日スラムから工房まで2時間もの道を歩いて 通っていました。また、バスで通っていた私たちよりいつも早く来て工房の前で待っており、昼食を食べるのも忘れて新しいことをどんどん吸収し楽しそうに制 作していた姿が心に残っています。
アフリカでの経験は作品にどう影響していると思いますか?
違う場所へ行くと今まで見たことない面白いと感じるものが沢山あるので、それが作品に登場します。また、そこで見てきたことや出会った人達のことを思うと頑張れる気がしてきます。
横浜トリエンナーレ会期中にBankart企画の展覧会で、横浜の町中にフラッグの作品を掲げられましたが、アートを町に存在させることのおもしろさや難しさについて教えてください。
おもしろいと思うことは私と全く違うことをやってきた人達と関われるので社会と繋がる感覚があります。しかし、展示してもらう場所の理解を得ることはなかなか難しいと感じます。
平田さんの制作のテーマや作品をとおして表現したいことは何ですか?
様々な場所へ行くと、いろいろなものが繋がっているんだなと感じます。その中で作品を通して豊かに生きるヒントを探しているように思います。
2月にグループ展を控えていらっしゃるそうですが、その抱負を。
展 覧会タイトルが「outopos」というのですが、1500年頃のギリシャ語で平等で美しい世界の実現を目指しeu(良い)topos(場所)という 言葉があったようです、しかし理想郷を追求すると人々の思想の中に非人間的な管理社会の様相が強くなっていき素晴らしく良いがどこにもない場所ou(無 い)topos(場所)と考えられるようになったそうです。
社会のいろいろな問題がある中で、それぞれのユートピアを見てもらうことで想像する力を見つめ直したいと考えています。
名古屋のアートシーンについて感じることがあれば教えてください。
それぞれの大学で面白い動きをしているように感じています。
平田あすか(ひらたあすか)
1978年 愛知県生まれ
2005年 名古屋芸術大学大学院美術研究科造形専攻修了
■おもな個展
2007年 平田あすか展(AIN SOPH DISPATCH/愛知)
2008年 平田あすか展(AIN SOPH DISPATCH/愛知)
■おもなグループ展
2004 大人揚棄(Art & Design Center/愛知、CAP HOUSE/兵庫、PRAHA/北海道)
2005 「くつをぬいで。」(善光寺別院願王寺書院明光閣 他/愛知)
GRABANDO(Museo de los Pintores Oaxaqueños/メキシコ)
2006 Diversidad Cultural del Grabado(Centre Cultura de la Vila/スペイン)
Make Yourself at Home(Brighton Media Centre Gallery/イギリス)
2007 JANA LEO KESHO(Rahimtulla Museum of Modern Art/ケニア)
2008 Asia Top Gallery Hotel Art Fair 08(Hotel New Otani/東京・YOKOI FINE ARTブース)
BankART LifeⅡ(Noren Flagart Project横濱芸術のれん街/神奈川)
Dual-Life(愛知県美術館ギャラリー/愛知)
■展覧会スケジュール
グループ展 outopos
参加アーティスト:石田典子、伊藤里佳、柴田麻衣、トザキケイコ、平田あすか、森田朋
会期:2009年2月7日(土)~2月22日(日)
時間: 12:00~19:00 ※最終日のみ17:00まで 月曜日休廊
会場:GALLERY APA(〒467-0003 名古屋市瑞穂区汐路町1-15)
URL http://www.fuji.bpl.jp/apa/
※オープニングパーティ&アーティストトーク 2月7日(土)18:00~
写真:《鳥からのプレゼント》ベルベットに刺繍、1020×820mm、2008年