アートホリックな人のいまをお届けするこのコーナー。今回は、GALLERY APAの渡邊見美さんにお話を伺いました。
渡邊さんがAPAを引き継がれてどれくらいになりますか?
渡邊さんがAPAを引き継がれてどれくらいになりますか?
2003年5月に先代の父が亡くなり、私が企画展を始めたのが05年7月です。でも最初の1年半ほどは、父の代からお世話になっている作家さんなどから「この人をやりなさい」と言われてやっていました。ギャラリーというのはこういうものかと思っていましたが、年齢が離れたキャリアのある作家さんの企画展を自分がやりたいわけでもなくやっているのが苦痛で。「この人を」と言われても断って自分で作家を探すようになり、私らしさが出てきたのはここ数年ですね。
お父様の時は一定の評価のある方を扱っていらっしゃいましたが、渡邊さんの代になって若手でも実力がある方が1階で個展をするようになり、APAのイメージが変わりました
あるギャラリーの方が、自分の年齢の上下10歳くらいまでの作家がつき合っていきやすいと言っていましたが、年齢が離れていると価値観や作品のいいと思うところも違ってきます。背伸びするよりも自分がいいと思える作家を紹介した方がいいと、方向性を変えました。若手を取り扱い始めた当初は「俺のプライドはどうなるんだ」とおっしゃる古株の作家さんもいましたが、ひるみませんでした。
画廊のお仕事をされていたわけではないのに、APAを引き継ごうと思われたのはなぜですか?
2005年4月からAPAの運営に関わったのですが、それまでは父が信頼していた方から紹介された人に任せていました。その人が父の思い出話をするお客様に「そういう話をするなら来ないでください」とか、何度かいらしたお客様に「そろそろ買ってください」と言ったりしたため、父との会話を楽しんで絵も見てくださっていたお客様が離れていきました。「行きづらくなった」という手紙や電話をいただき、このままではいけないと一念発起しました。
また、その年の5・6月は壁の補修をするために休廊予定だったところ、4月に突然、新聞に「APA閉廊」と書かれてしまいました。任せていた人がそのことを隠していて、ある作家さんから「APAが閉廊すると僕ももうできないね」と言われて愕然としました。その人には辞めてもらうことが決まっており、「私が辞めるから続けていけないんじゃないですか」と根拠のないことを話していたらしいです。でも、だからこそ私がやろうと強く思えたのかもしれません。
そんなこともあってAPAの周囲から人が離れていきました。でも人生の勉強をさせてもらいましたし、本当に気の合う人とやっていった方が楽だなと思うようになりました。
渡邊さんはアートフェアなど新たなフィールドに挑戦されていますね
まずアートフェア東京に出展を2回応募して落とされました。それで実績をつくろうといろいろなフェアに出展して、3回目にアートフェア東京に出展できました。父がやらなかったことをやりたかったのではなく、もっとアートを身近に感じてもらいたいと参加したのですが、実際に参加してみると、その思いとアートフェアがかけ離れていることに気づきました。アートフェア自体、アートに関係ない人が来るところではないですから。長久手アートフェスティバルに参加したのは、こちらの方がアートの楽しさを広げられるかなと思ったからです。趣味でつくったような作品をダンボールに並べている方もいましたが、私はパネルで壁面をつくって絵を展示しました。そうしたら、5000円の作品を迷われていたお客様が会場を一周して戻ってきて、「初めて絵を買うんですけど、どうやって掛けたらいいですか」と買ってくれました。
渡邊さんはアートフェアなど新たなフィールドに挑戦されていますね
まずアートフェア東京に出展を2回応募して落とされました。それで実績をつくろうといろいろなフェアに出展して、3回目にアートフェア東京に出展できました。父がやらなかったことをやりたかったのではなく、もっとアートを身近に感じてもらいたいと参加したのですが、実際に参加してみると、その思いとアートフェアがかけ離れていることに気づきました。アートフェア自体、アートに関係ない人が来るところではないですから。長久手アートフェスティバルに参加したのは、こちらの方がアートの楽しさを広げられるかなと思ったからです。趣味でつくったような作品をダンボールに並べている方もいましたが、私はパネルで壁面をつくって絵を展示しました。そうしたら、5000円の作品を迷われていたお客様が会場を一周して戻ってきて、「初めて絵を買うんですけど、どうやって掛けたらいいですか」と買ってくれました。
クリエイターズマーケットには招待ブースで参加しましたが、温度差がありました。「高い」と言われるお客様が多かったですし、いつもどおりに整然ときれいに展示したら、近寄ってもくれませんでした。だから今回の長久手はポストカードから置こうと。そうすれば原画を手に取ってみたくなるかもしれないですし、そういうものも必要と思いました。
経験なく始められたからこそ、既成概念にとらわれずに活動を広げられたのでしょうか?
作家さんに「見美さんは作家っぽい」とよく言われます。壊したい、そして自分のやり方で見せたいというところが作家みたいだと。中日新聞に取材された時も「福袋やチャリティで全額寄付など他のギャラリーがやらないことをやるのは、他とは違うことをしてやろうと考えているからですか」と聞かれましたが、そういうわけではないです。福袋は熱帯魚の店でもやっているので、アートでもあっていいのではと発想しました。こうじゃなきゃいけないとか他に合わせないといけないということはないと思うので、私らしさが出せたらと思います。
渡邊さんがアートに興味を持ったきっかけは?
高校生の時にAPAがオープンしたのですが、百瀬寿さんの作品のグラデーションがきれいで思わず「これ欲しい」と8万円で買ったのが始まりです。高校生にとってはすごい金額と思いますが、年に1回くらいそういうことがありました。私が「赤がいい」と言うと、父は「グリーンの方が飽きがこないよ」と。その作品をいま見ると、父の言うことを聞いておけばよかったなと思いますが、父にはお金を払ってそういう勉強をさせてもらいました。
これまでで、あれは大変だったなと思うことは?
個展初日の開場時間を過ぎてもここに作品がまったくなく、その時は焦りました。11時オープンなのに作家さんが来たのは13時過ぎで、オープンすぐに見に来てくれたお客様には申し訳なかったです。若手にも約束の搬入時間に現れず、その日の夜中に到着したという人も。大変でしたが思い出に残っているということは、楽しかったということなのかもしれませんね。
またいつか再開するということはありそうですか?
そういうことがあったとしても、ここの空間では再開しないと思います。ここは父かつくった空間なので、その時は私が空間を新たにつくると思います。ここで初めて個展をした若手は「その時は僕たちが見美さんを支えます」と言ってくれていて嬉しいです。とくに加藤雅也さんは私が何を頼んでも断らない。ここでやらせてもらうと決めた時から見美さんに頼まれたことは絶対断らないと決めました」と。
来年3月3日まで開催の「APA集大成!卒業展」について教えてください
これまで紹介してきた作家を一堂に紹介しますが、それではいつもと変わらないので初めての作家を2名加えています。「APA成果の集大成展」で33名を見せて、次の週から1週間3名ずつの個展が続きます。これまで1階のMain Roomで展示したことがない作家に、あえてMain Room で展示してもらいます。「期待してるから裏切らないでね」と脅してます(笑)。
渡邊さんも全力疾走ですが、作家さんも全力疾走ですね。その後の企画は?
3月8日から2階で開催するMarche de APA 展も他ではない企画。アートのスーパーマーケットというか、買物かごに商品を入れるイメージです。作品もきれいに並んでなくて山に積まれた中から探す感じです。作家にもスーパーに並んでいるようなものでお願いしています。北村尚子さんは卵をつくるそうですし、鈴木広行さんは趣味で動物の形に彫った切り株を出してくださるようで、洋服についているようなタグを付けたいと。スーパーで生産者の名前とコメントが写真付きで紹介されているようなキャプションも用意したいです。できれば作家さんのコメントを録音して店内放送のように流したい。震災の時から考えていたことがようやく実現しますが、最後なのでハメを外して楽しみたいです。
経験なく始められたからこそ、既成概念にとらわれずに活動を広げられたのでしょうか?
作家さんに「見美さんは作家っぽい」とよく言われます。壊したい、そして自分のやり方で見せたいというところが作家みたいだと。中日新聞に取材された時も「福袋やチャリティで全額寄付など他のギャラリーがやらないことをやるのは、他とは違うことをしてやろうと考えているからですか」と聞かれましたが、そういうわけではないです。福袋は熱帯魚の店でもやっているので、アートでもあっていいのではと発想しました。こうじゃなきゃいけないとか他に合わせないといけないということはないと思うので、私らしさが出せたらと思います。
渡邊さんがアートに興味を持ったきっかけは?
高校生の時にAPAがオープンしたのですが、百瀬寿さんの作品のグラデーションがきれいで思わず「これ欲しい」と8万円で買ったのが始まりです。高校生にとってはすごい金額と思いますが、年に1回くらいそういうことがありました。私が「赤がいい」と言うと、父は「グリーンの方が飽きがこないよ」と。その作品をいま見ると、父の言うことを聞いておけばよかったなと思いますが、父にはお金を払ってそういう勉強をさせてもらいました。
これまでで、あれは大変だったなと思うことは?
個展初日の開場時間を過ぎてもここに作品がまったくなく、その時は焦りました。11時オープンなのに作家さんが来たのは13時過ぎで、オープンすぐに見に来てくれたお客様には申し訳なかったです。若手にも約束の搬入時間に現れず、その日の夜中に到着したという人も。大変でしたが思い出に残っているということは、楽しかったということなのかもしれませんね。
またいつか再開するということはありそうですか?
そういうことがあったとしても、ここの空間では再開しないと思います。ここは父かつくった空間なので、その時は私が空間を新たにつくると思います。ここで初めて個展をした若手は「その時は僕たちが見美さんを支えます」と言ってくれていて嬉しいです。とくに加藤雅也さんは私が何を頼んでも断らない。ここでやらせてもらうと決めた時から見美さんに頼まれたことは絶対断らないと決めました」と。
来年3月3日まで開催の「APA集大成!卒業展」について教えてください
これまで紹介してきた作家を一堂に紹介しますが、それではいつもと変わらないので初めての作家を2名加えています。「APA成果の集大成展」で33名を見せて、次の週から1週間3名ずつの個展が続きます。これまで1階のMain Roomで展示したことがない作家に、あえてMain Room で展示してもらいます。「期待してるから裏切らないでね」と脅してます(笑)。
渡邊さんも全力疾走ですが、作家さんも全力疾走ですね。その後の企画は?
3月8日から2階で開催するMarche de APA 展も他ではない企画。アートのスーパーマーケットというか、買物かごに商品を入れるイメージです。作品もきれいに並んでなくて山に積まれた中から探す感じです。作家にもスーパーに並んでいるようなものでお願いしています。北村尚子さんは卵をつくるそうですし、鈴木広行さんは趣味で動物の形に彫った切り株を出してくださるようで、洋服についているようなタグを付けたいと。スーパーで生産者の名前とコメントが写真付きで紹介されているようなキャプションも用意したいです。できれば作家さんのコメントを録音して店内放送のように流したい。震災の時から考えていたことがようやく実現しますが、最後なのでハメを外して楽しみたいです。
その後は27~29日で壁のクロスに作家に直接絵を描いてもらい、それを30・31日に切り売りをします。公開制作で誰かが描いたところに、ほかの作家が描いたりしておもしろい作品になりそうです。
最終日までぎっしり盛りだくさんですね
静かにわからないように閉めるギャラリーも多いですが、私は最後はみんなで「お疲れさま」と盛り上がりたいです。すーっとしぼんでしまうと、ここでやってきた作家のモチベーションも下がってしまうので、気持ちを切り替えて頑張ってもらうためにも最後まで力を出し切りたいです。閉廊について言うのが早すぎるのではと言う方もいましたが、それは私の中では思い出をどうつくるかとか、APAの最後に向けての展開を考えるのに必要な時間だったんです。
最終日までぎっしり盛りだくさんですね
静かにわからないように閉めるギャラリーも多いですが、私は最後はみんなで「お疲れさま」と盛り上がりたいです。すーっとしぼんでしまうと、ここでやってきた作家のモチベーションも下がってしまうので、気持ちを切り替えて頑張ってもらうためにも最後まで力を出し切りたいです。閉廊について言うのが早すぎるのではと言う方もいましたが、それは私の中では思い出をどうつくるかとか、APAの最後に向けての展開を考えるのに必要な時間だったんです。
Marche de APA展についても規約を送り忘れてしまい、ある方から「売れたら全部APAに寄付なの?」聞かれました。もちろんそんなことはありませんが、だから返事が来ない人もいるんだと。その時は規約をあらためて送りますと答えましたが、そんなことを気にせずに参加の意思を示してくれた方の気持ちを大切にしたいし、その人たちと一緒にやる方が気持ちいいなと。
Marche de APA展で初めて作品を買う人もいるでしょうし、その人にとってはその経験がいろいろなところで作品を見たり買ったりということにつながると思います。最後にパァッとはじけて、種をたくさん蒔く感じですね。では最後に、これまでやってきて名古屋のアートシーンについて思うことはありますか?
NAGOYA ART MAP制作をとおして、いろいろなギャラリストと交流できましたが、名古屋はギャラリーの仲がいいと思います。東京の人に話すと「商売敵なのにすごいね」と言われます。HAMの伊藤さんやa・c・sの佐藤さんなど、いろいろ教えてくださる先輩が多く、そういう方たちと関われて恵まれていたと思います。
■APA集大成!卒業個展
Marche de APA展で初めて作品を買う人もいるでしょうし、その人にとってはその経験がいろいろなところで作品を見たり買ったりということにつながると思います。最後にパァッとはじけて、種をたくさん蒔く感じですね。では最後に、これまでやってきて名古屋のアートシーンについて思うことはありますか?
NAGOYA ART MAP制作をとおして、いろいろなギャラリストと交流できましたが、名古屋はギャラリーの仲がいいと思います。東京の人に話すと「商売敵なのにすごいね」と言われます。HAMの伊藤さんやa・c・sの佐藤さんなど、いろいろ教えてくださる先輩が多く、そういう方たちと関われて恵まれていたと思います。
■APA集大成!卒業個展
Main Room(1F) Fine Room(1F) F2(2F)
12月18日(火)~23日(日) 伊藤里佳 藤原史江 松岡徹+仲間たち
1月8日(火)~13日(日) 小野養豚ん 藤掛幸智 加藤K
1月15日(火)~20日(日) 水野誠司・初美 栁本美帆 寄川桂
1月22日(火)~27日(日) 横井彰 横田千明 幸勝也・渡邉貴子
1月29日(火)~2月3日(日) 加藤雅也 大村優佳 小澤輝余子
2月5日(火)~10日(日) 久保田毅楽 カオリとマリコ 石神則子
2月12日(火)~17日(日) 島嵜りか 加藤真也 梶千春
2月19日(火)~24日(日) 吉野もも 天野芙美 福永照久
2月26日(火)~3月3日(日) 松尾栄太郎 鈴木かおり 前田真喜子
■Marche de APA 展
2013年3月8日(金)~24日(日)
GALLERY APA
名古屋市瑞穂区汐路町1-15