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2011年6月15日水曜日

アーティスト・近藤サヨコ

アートホリックな人のいまをお届けするこのコーナー。今回は、来月に個展を控えたアーティストの近藤サヨコさんにお話を うかがいました。

アートとの出会いを教えてください

子供の頃からキャラクターやマンガのような絵をよく描いていました。絵を描くことは好きだったけれど、高校は普通科へ。高校の時は美術といえば絵か彫刻という認識しかなく、日本画を描く時に水彩でデッサンをするのが好きだったので、美術短大の日本画コースへ進学しました。

映像に興味を持ったきっかけはなんですか?

短大を卒業後、四大の総合造形コースへ編入。短大では映像部に所属し、そこで初めて映像も美術だと知りました。今ほど携帯やデジカメが発達していなかったので、自分で撮影、パソコンで編集して作品ができるのがとても新鮮でした。

自作の人形をセットで撮影されていますが、どんなこだわりからそのようにされているのですか?

最初は友達に出てもらったりして、人形は使っていませんでした。今のスタイルになったのは大学4年生くらいから。友達だと何度も撮り直すのも申し訳ないし、海のシーンを撮りたくても、海に行くのは大変。人形だったら疲れないし、セットをつくれば思い通りに撮影できるかと。
また、球体関節の人形に興味を持っていたというのもあります。大学に入った頃に四谷シモンの作品を知り、こんなにカッコいい世界があるんだと。その時は人形を自作しようとは思いませんでしたが、それと自分の作品を組み合わせたら自分の好きな世界観を表現できるのではと思っていました。

物語はどのように発想されるのですか?

ストーリーをつくり、それに合わせて人形やセットを製作し、撮影をして、映像ができてから音楽や効果音を付けています。自分で脚本を書くのは映像部に入った短大1年生の頃から。当時はエログロに憧れていたのでそういう要素もありましたが(笑)、薄暗くてじめっとした感じは変わりません。太宰治や横溝正史、江戸川乱歩、泉鏡花の小説の影があり耽美ではかない世界観も好きでした。
私は育った新興住宅街にはそういうものがなく、父母の実家も都会だったので、漠然と田舎の村や鳥居のある風景の薄暗さや怖さに憧れがあって。だから横溝正史が描く、閉塞感のある村や孤島の暗くて怖い感じに憧れがありました。
物語は、生活の中で美しいとか面白いとかちょっと心に引っ掛かったこと、たとえばミツバチの生態とか青いバラができないこととか、そういうものを普段からメモしています。映画のようにこのシーンを撮りたいと思う時もあります。そういったものをつなげて1つのストーリーにしていきます。私自身が一からオリジナルでつくるのではなく、キーワードをつなげている感じです。

作品をとおして表現したいことは?

「戦争反対」とか「アートで世界が変えられたら」とか、そういうことは思いつきません。私の作品が何かを変えられたり影響力を持つとは思えないからです。私にとっての作品は日記のようなものです。昔の作品を見ると、自分だけにその時考えていたことがわかるというか。日記を人に公開している感じでしょうか。

見る人にこう考えてもらえたらとかありますか?

たとえば月を見ると「きれい」と思いますが「きれいすぎて怖い」とも思います。作品ではその怖い方を増幅させて、ニ面性のマイナスの方を見せたいです。
私は自分が楽しむために制作しています。他の人に伝えるためにと思えることはすごいと思いますが、「戦争反対」とか言えないし、それを伝えるメッセージが私の作品にあるとは思えません。あくまでも私的なものの見方や、感じ方を見ていただければ、できたら共感していただければと思います。

来月の個展ついて教えてください

新作はどれも物を集める話です。私自身、物が捨てられないし、ひととおり集めたい方で、たとえばフェルトで何かつくりたいと思うと全色集めて、それだけで満足し何もつくらなかったり。自分の好きなものに囲まれていると安心します。人のアイデンティティは持ち物によっても決まってくると思います。捨てることは業が深い。でも集めるだけで安心してしまうのも業が深い。そこを増幅させて物語をつくりました。

東海のアートシーンについて

ここに行ったらいつも面白いことをやっているという場所がないように思います。個々の展覧会は面白くても、「名古屋の現代美術ならここ」というような、いつも満足できる展示をやっているところがないのが残念ですね。


■近藤サヨコ プロフィール

1979.08 名古屋で生まれる
2002.03 名古屋造形芸術大学 総合造形科 卒業
2007.01 個展 「花と蝶と」 (ギャラリーアートフェチ)
2007.08 個展 「待宵月」 (ギャラリーアートフェチ)
2008.11 個展 「彼方の黄昏」 (ギャラリーアートフェチ)
2011.05 グループ展 「Woodland Gallery 2011」(美濃加茂文化の森)

ホームページ http://www.kondosayoko.com/

■展覧会スケジュール
近藤サヨコ映像展「蒐集するにあたり」
日時/2011年7月16日(土)~8月7日(日)13:00~19:00
   ※会期中の金・土・日曜日・祝日のみ開廊
場所/CROSSING(名古屋市中区栄2-4-12 チサンマンション広小路2F 209)
   ※7月16日より開設